Autumn

アイデアにみちたジャズ喫茶

南に向かう片流れの屋根が
明るい店内をつくります

マスターの人柄とコーヒ
そしてこの空間を是非味わってください

鈴木工務店の店舗事例です。白州にある、ジャズを聞きながら自家焙煎珈琲を飲むことのできる喫茶店です。漆喰の白、硝煙で塗った木材の黒、ベンガラの赤のコントラストが鮮やかです。片流れの大屋根で、小さい店ながらも自然光をたっぷりと取り入れ、ゆったりとした空間をつくっています。伝統的な素材や技術を使いながら、ここまで自由でモダンな空間ができることを実感できる事例です。

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旧・甲州街道沿いに
奥ゆかしく立つ喫茶店

北杜市白州町台ヶ原宿は、旧・甲州街道の甲州最後の宿場町でした。今も老舗の酒蔵や旧家が軒を連ね、落ち着いた趣きを見せています。この台ヶ原宿の西端近くに自家焙煎のコーヒーを出す「こぉ〜ふぃ〜屋Autumn」があります。

店の敷地は間口より奥行きが長い「うなぎの寝床」のような細長い土地。店はその奥行き方向の真ん中あたりに建っています。店の手前は、中心にシンボルツリーがゆったりを枝を広げる芝生の前庭。駐車場は店の裏にまわったところにあるので、道からは庭の緑の向こうの店全体がよく見えます。

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黒、白、赤で構成された
モダンでお洒落な外観

屋根は急勾配の片流れで、店の正面側が高く、駐車場側が低くなっています。正面の壁は白漆喰の真壁。縦横に直行する黒い木材で白壁が格子状に区画され、モダンな印象を受けます。正面からみると、黒く縁取られた白い正方形が連続しているのですが、そのうち高いところのいくつかはランダムにガラスになっていて、自然光のトップライトを店内に射し込ませています。

黒い屋根の軒裏にちらっと見える赤。壁の黒い線と白い塗り壁の面。扉の赤。その中に、低いところで横一文字に、高いところでリズミカルに分布する窓。シンプルでありながら、とてもモダンで自由な感じを与えるデザインは、まさにJAZZに通じるものがあります。

それでも、この赤と白と黒という強い色彩が、どぎつくなく、しっくりと景観に融け込んでいるのは、伝統的な自然素材による色にこだわったから。白は漆喰そのものの白。黒は亜麻仁油に溶かした硝煙で、赤はベンガラで着色しています。

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ジャズ喫茶のイメージとは違う
光降り注ぐ明るい店内

重い赤い扉をあけて室内に入ると、いわゆる「薄暗い、とっつきにくい」ジャズ喫茶のイメージと違って、正面の高い天窓から光が降り注ぐ明るい空間が広がります。急勾配の茶色い天井を支える黒い登り梁が、屋根裏に潜んでいるかのような、印象も与えます。

マスターが豆を焙煎し、コーヒーを淹れている厨房の空間の上面には、赤く塗られた厚板の天井が張り出しています。カウンター席まではこの張り出した天井の下にあたり、さながらコーヒー屋台の庇の下に居るような感じです。ここに座ってコーヒーを注文すると、マスターが「はい」とコーヒーミルを手渡してくれて、セルフでコーヒー豆を挽くよう促されます。

厚板の天井の上はロフトになっていてディキシーのジャズ人形や名盤のレコードがさりげなく飾られているだけで、高窓から入る陽射しで白壁が映える、すっきりした空間です。カウンター席以外にもいくつかの客席と、剣道や旅、コーヒーなどの書物がびっしりと並んだ本棚があり、ゆっくり時間を過ごしたくなります。

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建物を作るにはまず
人間を知ることから

ここに店を出す以前、マスターは明野でカウンターだけの小さな喫茶店を営んでいました。剣道の道場で親方と知り合い、つきあいが深まるにつれマスターは「いずれ道場のある白州で自分の店をもちたい、その時には施工してほしい」と親方に頼みました。

依頼を受けた親方は、ちょくちょく明野までよく足をのばします。「珈琲飲みには来るんだけど、なかなか建築の話をしないんだよね」と、マスター。「だって人間を知らなきゃ、建物、造れないじゃんね。俺のことだって、知ってもらいたいし」と親方。なんでもない話の中から顔の見える関係を築きつつ「その人のための建築空間」につながる要素を集めていたのです。

白州でももっとも立地のいい台ケ原宿で、土地が出るという情報を地元ルートでつかんだのは親方でした。「こんないいとこはないぞ。すぐに買えし」との薦めでマスターは土地を購入。親方が板に薄墨で平面図を描き始めたのは、土地を入手した2年目から。それからは、明野から自宅への帰りがけにマスターが親方の作業場に寄るようになり、語り合う中から計画が形になっていきました。

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信頼に応えて
よりよいものづくり

建物そのものについては、マスターから親方への注文は、本棚の棚の寸法以外ほとんどなかったといいます。「明野の店で使っていた流しとガス台と桐ダンスをカウンターの内側に据えて珈琲をたてられたらそれでいい。あとのことは全幅の信頼をもって、親方に任せる、というのが僕からの最大の注文」とマスターは言います。

「任されたら、張り切る」のが、親方の職人気質。外観や内観はもちろんのこと、テーブルや椅子に至るまで、雰囲気に合うオリジナルを作りました。親方とマスターとが、お互いへの信頼をベースにじっくりと時間をかけて造り上げた「こぉ〜ふぃ〜屋Autumn」。住宅とはまた違った、とらわれない自由な発想で、親方の伝統の技が、斬新な形で開花した事例です。ぜひ一度、コーヒーを飲みに行ってみてくださいね!

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朱塗りの玄関扉には、錆びさせた鉄の板の庇が。鈴木工務店に長年眠っていた鉄の板がここで活かされた。

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カウンターから入口方面を見たところ。本やレコード、CDの量の割に圧迫感がないのは、立体的な収納デザインのおかげ。

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鉄板を腐蝕させ、店名を焼き切って、中に照明を入れた鉄の箱看板。同じ白州町在住の若い鉄作家さんの作品。

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一枚板のカウンターテーブル。カウンターの向こうは、一段低くなったマスターの定位置。会話を楽しむ常連さんがいつも寄りついている。

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さまざまなジャンルの本がびっしり並ぶ本棚。棚の寸法はマスター指定で、鈴木工務店で施工。

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こぉ〜ふぃ〜屋 Autumn

住所: 北杜市白州町白須101
Tel: 0551-35-2884
営業時間: 9時〜19時
定休日: 木曜
自家焙煎珈琲

工事内容:新築
用途:店舗
竣工:2007.11
場所:北杜市白州町白須101
延床面積:37.26㎡(11.29坪)
規模:木造平屋建て
構造:木造伝統軸組工法
柱:桧
梁:米松、一部(昇り梁)集成材
天井:杉無垢板 一寸厚(30mm)
基礎:現状のGLにベースを打ち、基礎を立ち上げ、完成後、回りを盛土
壁:内外壁ともに 漆喰塗仕上げ
取材・文: 持留ヨハナエリザベート
撮影: Shuhei Tonami
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